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2014年4月20日

光文社古典新訳シリーズ(14)

刊行スピードに追い付きつつある光文社古典新訳シリーズ。今回は何と言っても、「すばらしい新世界」が出色でした。考えさせられるし、笑える部分も多い。お勧め!

(131) すばらしい新世界(オルダス・ハクスリー):面白かった!!近未来の管理社会を描いたものは多いけど、これは良く出来てます。最大多数の最大幸福を追求すると、確かにたぶんこんな社会になると思う。これが幸福なのか?とは思うけどさ。でもここまでしないと「幸福」にはならないんじゃない?すると幸福って何の意味があるんだ?と深く考えさせられました。フォードが神になっていて、十字の代わりにT字を切ったり、オーマイガー!の代わりにOh my Ford!になってたりするのは笑える。今作ったら断然、Oh my Google!だろうなぁ。

(132) 饗宴(プラトン):今まで読んだ3冊のプラトンの中で一番面白い。エロス神について誰が一番うまく賛美できるか、という議論なんだけど、恋愛なのか愛なのかというのは今でもある議論として、この時代には少年愛(或いは青年愛かな)が当然のように語られているのが新鮮。女性同士ってのもあったんだね。男性同士ほどおおっぴらではなかったのかもだけど。

(133) ソクラテスの弁明(プラトン):今まで読んだ4冊のプラトンの中で一番わかりやすかった。ソクラテスが嫌いな人たちの気持ちも好きな人たちの気持ちもよくわかる。哲学の話は置いといて。『無知の知』と言う言葉はおかしいのか。確かに。無知なんだから、無知ということも知ってるのはおかしいやね。言葉の遊びになりつつあるけど。

(134) 砂男・クレスペル顧問官(ホフマン):2冊目のホフマンに砂男が入って嬉しい。これ好き。怖いけど好き。1冊目は読んだことあるのが多かったけど、こっちは初めてのが多かった。砂男が一番好きだけど、クレスペル顧問官も哀しい。鏡像を失う話もありそう。奥さんがしっかり者であるある感。

(135) 地底旅行(ヴェルヌ):海底二万里かと思って読んだら違った(そりゃそうだ)。アイスランドから地底を旅してギリシャで吹き上げられる話。冒険家ではない学者と甥っ子がアイスランド地元民のハンスを頼りに地底を旅行する。学者も甥っ子もドイツ人に見えませんな。旅行もあまり楽しそうじゃない。だいいち食事が不味そう。あ。そこでドイツ人なのか?

(136) 孤独な散歩者の夢想(ルソー): JJルソーの遺作ていうか日記。晩年は不遇だったんだね。少し被害妄想的だが、迫害されたら一人の楽しみを見つける、という意見には賛成。いじめられっこ必読。いや慰めにはならんか。

(137) ガリレオの生涯(ブレヒト):ガリレオに題を取った科学と神学の戦い。確かにガリレオ名誉回復したのって最近なんだよねー。科学は聖書を超える、が、神様は科学を超える。難しい問題だ。キリスト教が話を具体的にしてしまうからいかんのだ。オリジナルは科学を超えていたのに。ガリレオがお茶目で魅力的。これはちゃんとイタリア人に見えるぞ。

(138) ピグマリオン(バーナード・ショー):マイフェアレディの原作。映画と終わり方が違う。ま、大向こうに受けるのは映画の結末だから仕方ないよね。でもこっちの方が好き。2人の紳士とバカ娘ではなく3人になる、っていいなー。そういう関係ってとても素敵と思う。

(139) ひとさらい(シュペルヴィエル):最初は善意から、そして確信犯の人さらいになってしまう大佐。人さらいではなく預けられた少女に恋をしてしまい、しかし少女はさらわれた少年とありがちな恋におち・・・このパタン最近読んだな。何だっけ。ジイドだ。でも本作の女の子は自覚的(娼館から救出されたんだし)。反抗するジョゼフもカッコいい。

(140) 崩れゆく絆(アチェベ):アフリカ(ナイジェリア)の独立前夜のさらに前夜。白人とキリスト教がやってきて、それまでの文化は腰砕けになっていく。村の勇士だったオコンクォは時代遅れの男として自殺する結末。Things fall apart(原題)の雰囲気が邦題ではいまいちじゃない?。崩れゆくのは絆じゃないと思う。

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