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2010年8月23日

光文社古典新訳シリーズ(6)

紅楼夢のせいで暫くお休みになった新訳シリーズ。今回は重たいのが多かった・・・

(51) 社会契約論(ルソー):初めて。民約論と学校では習ったような。社会と契約という発想は新鮮。特に神様と契約していた中世においてはさぞかし過激な理論だったのだろう。難解だろうと思ってたのだけど、全然読みやすかった。ルソーってエミールの人だもんね。いわゆる哲学者てより作家でもあるんだった。

(52) 人間不平等起源論(ルソー):こちらも初めて。なるほどーと思えた社会契約論とは異なり、それはないでしょ、それは違うよと思うことが多い。でも動物と人間に対する考察としては、ダーウィンより100年前なんだし、共産主義を経験してみないと、所有がなければ不平等もなくなる、と思ったのも無理ないか・・・

(53) 種の起源(ダーウィン):初めて。ダーウィンって学者じゃなくて素人なんだなと思った。いや悪い意味じゃなくて。学術書というより実業家風の説得調な読み物。でも遺伝子も大陸移動もわかってない時代にここまで考えられちゃうのはすごい。道楽者だから学者様とは違う視点で考えられるのかも。

(54) 椿姫(デュマ・フィス):読んだつもりでいたけど初めてだったかも。映画?TVドラマ?は見たことがある。だいぶ印象が違う。オペラの脚本は更に違うのだそうだ。高級娼婦と若者の恋の顛末。半分は作者の実体験だそうでマルグリット嬢にはリアリティがある。アルマン君にはない。こうだったら良かったのにというドラマであることがわかる(笑)。

(55) 人はなぜ戦争をするのか(フロイト):初めて。第一次/第二次大戦の時代をオーストリア/ドイツでユダヤ系知識人でいることって大変だったんだろうな・・・。人間は戦争をしたいように出来ているのかも、という絶望的悲観論も納得できるものがある。それでも人の交流に希望があるなら、実はインターネットが全面戦争を回避させられるものなのかもしれない。そう思いたい。こんな題名だけどフロイトらしい内容も網羅されていて、読みやすいです。年代順に並べて欲しかったけど。

(56) ニーチェからスターリンへ(トロツキー):初めて。人物評伝集で、ニーチェ編で始まってスターリン編で終わっているからで、こういうタイトルで書かれているものではありません。途中の半分以上は知らない人の評伝でしたが、トロツキーが頭のいい「インテリゲンチャ」で、レーニンが好きでスターリンは嫌いだったことが良く判った。レーニンは何でスターリンが好きだったんだろ?

(57) 白い牙(ロンドン):野生の狼がだんだん慣らされて犬になる話。なんだか野生の呼び声の反対バージョンみたいだ、と思ったら同じ作者だった(笑)。犬好き必読。

(58) 訴訟(カフカ):読みやすくはないけど面白い。「変身」とは一味違う日常の中の不条理。安部公房みたい(ていうか安部公房がカフカに似てるのか)。編集の都合上?話が終わってから続くので混乱する。光文社新訳シリーズに限って、後書きを真剣に読むから許すけど。

(59) 宝島(スティーブンスン):子供の頃本を持っていたような・・・でもさっぱり記憶なし。悪役のジョンが魅力的。海賊ぽいのに登場人物残らずイギリス人なのが何だか笑える。thimbleを指貫じゃなく指キャップと訳した翻訳者様、気持ちは判るが、指キャップだと指を防御するものに聞こえるので海賊が縫い物に使うのは滑稽。指貫でいいと思うぞ。

(60) だまされた女/すげかえられた首(マン):初めて。すげかえられた首はインド舞台だけどインドぽい感じがしない(行ったことないけど)。なんでインドを舞台にする必要があったのか? だまされた女はおばさんがアメリカ人青年に恋をする話。誰もだましてはいないよ。自分で自分にだまされたということかな?おばさんは自分に素直で好感が持てるかもしれないが、読み物としてはおじさんが美少年に恋をする「ベニスに死す」の方が私は好きだな。舞台がヴェネツィアだからかもだけど。

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