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2013年9月22日

光文社古典新訳シリーズ(12)

古典新訳シリーズの方も、夏頃からパタパタと読み始めた。今回は1冊ものばかりだったので、さくさく進んだ。

(111) コサック(トルストイ):若きトルストイの秀作だそうで。コサックもコーカサスもよく書けているんだと思う。行ったことないけど。山脈に感動する下りは、そうだよなーと思った。でも若い頃の秀作でしかないような気もする。

(112) 桜の園/プロポーズ/熊(チェーホフ): 桜の園ってサクランボの庭か。ずいぶん感じ違うけど確かに欧米感覚ではそうだろうなぁ。浪費壁が抜けないママと叔父さん、しっかり者だけど生活力がない姉と夢見がちな妹。チェーホフは喜劇のつもりだったそうだが、確かに喜劇には見えない。プロポーズに来たのに喧嘩してしまい、プロポーズ成立後も喧嘩している二人や、あんたなんか熊だ、と言い争っている内に唐突に恋に落ちる借金取と後家さん、の二作はどう見ても喜劇。読んでいて楽しい。

(113) 失脚/巫女の死(デュレンマット):そうだろうそうだろうと思えるソ連ぽい「失脚」。オイディプス物語の藪の中風巫女の死。これ面白い。自動車の故障でうっかり泊まった宿で模擬裁判にかけられ、殺人者である自分に酔って自殺する「故障」も面白かった。スイスの人が書くドイツ語って立場が難しいのだそうだ。ネイティブなのにネイティブとは言えないらしい。言語って悩ましいのな。

(114) タイムマシン(ウェルズ): 昔読んだ筈なのに、さっぱり記憶なし。こんな話だったか?と読み終わり、解説を読んでそんな話だったか!と思った。デビュー作だったのね。悲観的未来論だが案外そんなものかも。タイムマシンはいつできるんだろう?

(115) トムソーヤの冒険(トウェイン):これも昔読んだがほぼ記憶なし。無人島に家出する所しか覚えてなかった。読み直してもちっとも面白くない。トムもハックもカッコいいと思わない。察するに女の子の書かれ方がつまんないからだな。

(116) 月を見つけたチャウラ(ビランデッロ):どれも暗い。イタリア人でも暗い小説を書く人がいるんだ!ノーベル賞作家だそうだ。自分が死神(病原菌)だった話のラストが哀しかった。

(117) ねじの回転(ジェイムズ): イギリスが舞台の怖い話だった。とてもイギリスっぽいが書いたのはアメリカ人。題名の意図が今ひとつわからない。子供が一人死んでいきなり終わり。おいおい種明かしはないのかー!

(118) 秘書綺譚(ブラックウッド):幻想怪奇短編集。うっすらと怖い。どれもイギリスぽい。「炎の舌」みたいに教訓的なのもあり。小人のコレクションはかわいい。

(119) 人間和声(ブラックウッド):上と同じ作者の怪奇小説というよりファンタジー。原題はHuman Chord。合唱ではなく詠唱だと思う。「君は変ホ長調だ」。うーむ。人間和声で世界は創れないと思うが、世界が違って見えるように、人に影響を与えるのはありそう。新世界創造の土壇場でミリアムちゃんと逃避する僕。うーむ。救いがあるんだかないんだか。

(120) 傍迷惑な人々(サーバー):ユーモア小説っていうか、漫才みたいな話。あるあるネタでおかしい。ニューヨーカーってこんな話が乗るような雑誌だったのか。挿絵もカワイイ。ダム決壊の日もマクベス事件も何でも壊す男も可笑しいけど、「あててごらんといわれてもねえ」は笑った。グラント将軍と運転免許の話はアメリカ人ならツボにはまるんだろう。

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